(前回⑤からのつづき)
「確かに、毎年確実に目標をクリアしているよな。しかも難なくこなしている所が不思
議だ。」
「営業マンには3種類のタイプがあって、数字に追いかけられる人、数字を追いかける
人、数字が付いてくる人だ。ほとんどが前の二者だ。数字をクリアできないタイプは
クリアできる人間に対して、偶然だ、顧客の担当者がいい人だった等々、本人の成果
を認めない傾向がある。また、出来ない理由を自分以外に求める傾向があるから、自
分の人生自体も他人のせいにする。こんなに頑張っているのに会社は評価してくれな
いなどが代表的なものかな。」
「そうだな。俺も正直言うと、頑張っているのに会社は評価してくれていないと思って
いる。」
「さっき話したように、社会が確変している最中であるから、自分では頑張っているの
にという昭和時代感で自己評価しても、それはズレてくるよ。」
「でも頑張った人間が評価されないのはモチベーションに影響が出るのではないの
か?」
「そう考える段階で既にズレている。評価は他人が好き勝手に決めることで、自分でそ
の評価を左右することはできない。また、面談でとてもよく頑張ったと褒められて
も、給料やボーナスが上がることはほぼ無い。」
「そうそう!面談で高評価と思ったのに、現状維持がせいぜいだ。でもそれは評価詐欺
じゃないか?」
「かなり重症だな~。単純に説明すると評価と報酬はリンクしない。褒めても報酬は上
げる気が無いからだ。報酬は上がらなくても褒められたこと自体に満足してしまうと
いう負け犬根性が長年植え付けられている。どんどん、待遇がサラミ戦術のように削
減されているだろ。」
「そうなんだよな。どうしても昔と比べてしまう。」
「どうしてこんな話をしたのかというと、相談を聞いていると現状の責任を会社に押し
付けているように感じたからだ。自分の人生は自分のものなのだから、頑張ったから
評価してくれという考えは止めた方がいい。」
「でも起業するなど考えたことも無いし、出来る気がしない。起業してもほとんどが倒
産すると雑誌の記事で見たことがある。リスクはできるだけ取りたくない。」
「起業しろといっているのではなく、予想されるリスクをどのように考えるのかという
ことだ。投資することを希望していただろ、それだって、リスクの塊だ。」
「会社辞めるの再度考えてみた方がいいかな。投資についても考えてみる。」
「勘違いして欲しくないけど、会社を辞めることを止める気はないし、残った方がいい
とも言っていない。一度、奥さんと今後の人生設計を真剣に集中的に見つめなおす時
間が必要じゃないのかと言っているんだ。」
「教えて欲しいけど、当社の持ち株や住んでいるマンションだけで軽く億単位の資産を
持っているだろ。どうしてそんなに増やせたんだ?」
(つづく)